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こんにちは♪ ス~ジ~です♪ 

こんにちは♪ ス~ジ~です♪ 

つねに誤りをおかす危険に

<混乱のまっただなかで、かぎられた情報を使って、生死
にかかわる決定を下さなければならない人びとは、つねに
誤りをおかす危険に直面している>

12月19日火曜日の朝早く、私がペンタゴンに着いてみ
ると、有能な指揮者マイク・カーンズ中将の率いる統合参
謀本部のスタッフと、パナマのマックス・サーマンの南方
軍スタッフは意気さかんだった。ばらばらだったものが、
すべてきちんと一つにまとまった。われわれは「出動態勢
」にあった。自信が戻ってきて、身体にみなぎった。不安
は消え、私は嵐の前の静けさと言った境地に入った。

「ノリエガはどうした」と、大統領はしきりにたずねた。
ノリエガを捕まえるのか。われわれがノリエガの首を引き
渡せなかったら、この作戦は失敗の烙印を押されるのか。
「大統領」と、私は言った。「作戦開始時刻に彼がどこに
いるか、私たちには知りようがありません。しかし、どこ
にいようと、彼は[指導者]ではなくなるのです。人前に
顔を見せることもできなくなります」。また私は、一人の
人間を悪魔に仕立て、自分たちの成功をその個人の運命と
結びつけてしまうのは危険です、と警告した。それでも、
大統領は自分の政策の背後に国民を結集しなければならな
い。その政策が戦争である場合、政治上の抽象的概念にた
いして反対の意見をあおることは非常に難しい。血も肉も
ある悪漢のほうがずっとやりやすい。そしてノリエガは、
悪漢としての資格をすべて備えていた。

正義作戦が始まった。報告がもどかしいきれぎれの断片に
なって、クライシス・センターに少しずつ入ってきた。
「デルタ・フォースがモデロ刑務所の屋根に着陸……デル
タなかに入る……デルタ守衛を殺した……クルト・ミュー
ズ独房から出る……デルタ・フォース、ヘリコプターで屋
根から飛び立つ。オーケー。だめだ! ヘリが火をふいた
。撃たれた! おりてくる! いや、通りを向こうに行く
……撃たれた……おりた……よかった……」。
この救助作戦にかかったのは6分だが、それは永遠につづ
くかと思われた。

クライシス・センターに入ってくる報告のほとんどすべて
は先の報告の訂正で、最初に聞いたことを信じるなという
古い格言の正しさをいまさらながら認識させられた。国家
指揮センターのあの小さい部屋に座っている私の感情は、
激しく天国と奈落を行ったり来たりして、ローラーコース
ターに乗っているみたいだった。戦闘には、とりわけ夜間
の戦闘には混乱がつきものである。混乱のまっただなかで
、情報がかぎられ、しかも間違っていることさえあるのに
、それを使って生死にかかわる決定を下さなければならな
い人びとは、つねに誤りをおかす危険に直面しているので
ある。


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